燃えよ剣・下巻を読んで📘

武州多摩から函館までの土方歳三との旅が終わりました。。

「新撰組」

混迷の幕末に「無」から生まれた剣客集団は欲と崇高な武士道精神が入れ混じった

奇異な集団として私は印象として持っており

時代劇から写る彼らは美化され、沖田総司は天才剣士として躍動し儚く、この世を去る彼の身体表現は、まさに新撰組という滅びゆく果ての哀愁に惹きつけられる要素として感じます。

今回、司馬遼太郎の「燃えよ剣」を読んで「観る」ということから離れ「読む」というこで自分の中にある想像力という可能性に触れることができました。

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目次

主人公の土方歳三と新撰組とは

武州武蔵国多摩郡石田村の出身。武士の身分からの出生ではなく

農家から生まれた。若い時は実家からの秘伝「石田散薬」という打ち身にも風邪や諸症状にも効くという評判の薬の行商として働く傍ら剣術修行に励み、その時に天然理心流の近藤勇・沖田総司と出会い彼の人生が大きく動き出す。

そんな武州多摩の田舎侍の若者が京で徳川将軍を守る浪士隊募集を機に近藤勇を中心として後に

「新撰組」の前身となる「壬生浪士組」を結成する。浪士隊募集時には清河八郎の画策で「倒幕派」へ転じようとした動きを敏感に察知し、当初の目的を志しを旗して「武士道」を重んじ

主君に仕え親衛することを武士の本懐として隊を律し組織として近藤勇を隊の頂点とし

土方歳三がまとめ上げ会津藩お預かりの「新撰組」へと転身していく。「局中法度」という厳しい掟を作り武士としてあるまじき行為とみなされた者は切腹・打首と粛清を行い隊を強い恐怖を与えながら強い忠誠心を持った武士の集団・組織として京を血に染める青春を送る。

「池田屋事件」で徳川幕府から多大な信頼を得た新撰組は大きな組織へと変貌。

近藤・土方は農家の出身でありながら幕臣として取り立てられ名実ともに「武士」となる。

その頃には徳川幕府は瓦解をし始め「大政奉還」を天皇に上奏し政権を返還したことで

新撰組も時代の表舞台から落とされはじめ、鳥羽伏見の敗戦から近藤勇が捕らえられ、打首。沖田総司の死から土方も武士としての死地を求めるように北へ向かいながら敗戦を重ね最後の地

函館で戦死する。

幕末の内戦は共通の思想からの分子対立。

ペリー来航を機に「夷狄打つべし」という尊王攘夷思想が生まれ、井伊直弼の開国から安政の大獄で攘夷思想を持つ武士の怒りは沸点に達する。

攘夷の思想は天皇を頂点の置くという思想は当時の武士として共通認識としているが、土方歳三はじめ「新撰組」は徳川政権を中心としての「佐幕派」としての攘夷思想を持ち、後に敵対する薩摩・長州による「天皇を中心とした政権」の「倒幕派」とは反する勢力として、こと攘夷としては共通だが日本の進むべき道と手段の違いから幕末・明治期まで敵対し内戦を繰り広げることとなる。

アヘン戦争が幕末の動乱を生んだ?

イギリスが清国と起こしたアヘン戦争を機に清国はイギリスの属国となり奴隷的な不平等条約を結ばされた事で隣国である日本・徳川政権も危機を感じていた。

イギリスからの恐怖とアメリカからの開国の圧力が260年続いた泰平の江戸時代に外交の苦しさを味わい果てには日本にとっての不平等条約を結んだ徳川幕府への不信感が反幕イデオロギーとなり

保守派と改革派が激戦。

明治の西南戦争まで内戦が続くこととなる。

燃えよ剣から学ぶ土方歳三の一途な信念

燃えよ剣で描かれる土方歳三は、いわゆるロマンチスト。憧れの武士になった事で

酔いしれている点ではナルシストとも呼べるかもしれない。(あくまで個人的な見解なので土方歳三ファンの皆様のクレームはご了承ください。。)

土方について史実とは異なるかも知れないが作家・司馬遼太郎は土方歳三を作品で描くことで

司馬遼太郎自身も青年兵として体験した第二次世界大戦敗戦に導いた昭和の軍人達への非難を

一途なまでの「武士道」を貫き通した土方歳三を蘇らせる事で比較し「日本人」「愛国心」「克己心」をぶつけたかったのではないか?

そして現代。私たちが住む令和という時代。

多様性に富んだ時代への突入からITは光よりも早い速度で私たちに情報と思想を与える。

現場での体験を他所に。。

そこで生まれるのは「未体験な思想」

土方は血を通いあわせ壮絶な体験をしながら武士道とは問うて己の死地を見つけ出した。

その死地にたどり着いたこのに

一種の幸せを土方は感じたのではないか?

コロナ禍に拍車がかかり「体験なき思想」は一人歩きし、時には波及し昨今の自殺率の高さを上げていくように感じる。土方のそれとは違う。

土方の一途な信念は「体験」を通して短い生涯で培い司馬遼太郎という昭和の戦地で「体験」を通したフィルターから私たちへのメッセージを届けているのではないか?と感じる。

そのメッセージは木霊として返ってくる答えは「燃えよ剣」を読んだ後に待っています。


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